今回は、アメリカの元CIA(中央情報局)の職員であるエドワード・スノーデン氏の証言を取り上げます。
スノーデン氏は、アメリカのNSA(国家安全保障局)の職員で、アメリカ政府による世界規模の監視活動を2013年に内部文書によって告発し、世界に衝撃を与えました。
個人情報は、普段、政府が管理しているのではなく、パソコンや携帯などを製造販売している民間企業やインターネットプロバイダーによって保護されているはずである。
しかし、通信機器使用者の知らないところで、民間企業とアメリカ政府間で情報のやりとりがあったこと、サーバーへのアクセスを許可していたことなどがスノーデン氏の告発文書で明らかになったのです。
「もし、日本がアメリカの同盟国をやめれば、日本中の電源が落ちるように、アメリカ政府は日本中のインフラに有害ソフト(マルウェア)を仕掛けた。」と証言したスノーデン氏。
2017年4月に日本関連文書が公開され、その1年後の2018年5月に公開されたものも合わせ、日本と直接関係のある文書は約20点あります。
スノーデン氏はこれらの文書を公開することで、日本の民主主義が非常に危険な状態にあり、政府と国民の力の差がますます開いていくという警告をしたかったのだといいます。
政府が国民の情報を監視することは、一方的な透明性が高まるだけで、逆に国民の側からは、政府の行動がわかりづらくなっている状態。
つまり、透明性の均衡が失われつつあるというのがスノーデン氏の主張でした。
六本木のヘリポートにあったNSAのアジトがアメリカ大使館に移設され、違法に集められたデータが外交の前線で、大使や権力者と共有されることは、彼らの意思決定に大きな影響を与えると共に、民主主義的なコントロールを受けていないNSAが発言力を高めることは、「超法規的なシステムが集めてきたデータ」が権力者を動かすことに繋がってきます。
空港などに導入されている顔認証ゲートについて、顔色などから気分を判断したり、病気にかかっているかどうかの判断が可能となったりする開発が進んでいますが、一見便利だと思われる技術の根底には、監視やデータ収集があり、金儲けや権力の強化につながってしまうのです。
集められた情報はAI兵器に使用されたり、殺人ロボット開発にもつながり、戦争の被害を拡大する恐ろしい話です。
スノーデン氏は、NSAの仕事を請け負うコンピュータ会社・デルの社員として2009年に来日し、東京都福生市で2年間暮らしていました。
勤務先は、近くのアメリカ空軍横田基地内にある日本のNSA本部。
NSAは、アメリカの国防長官が直轄する、信号諜報と防諜の政府機関ですが、世界中の情報通信産業と密接な協力関係を築いています。
デルもその企業の一つで、アメリカのスパイ活動はこうした下請け企業を隠れみのにしているのです。
アメリカの軍産複合体は、いまやIT企業に広く浸透し、多くの技術が莫大な予算を得て軍事用に開発され、商用に転化されています。
NSAはテロ対策を名目に、ブッシュ政権から秘密裏に権限を与えられ、大量監視システムを発達させていく事になりました。
アメリカは、日本政府に対して「特定秘密保護法」を繰り返し提案し、2013年12月、国会で強行採決される運びとなりました。
この法律について、これまで語られなかった背景を、スノーデン氏はこう明かしました。
『これは、NSAが外国政府に圧力をかける常套手段です。
「自分たちはすでに諜報活動を実施していて、有用な情報が取れたが、
法的な後ろ盾がなければ継続できない」と外国政府に告げる。
これを合法化する法律ができれば、もっと機密性の高い情報も共有できると持ちかけられれば、
相手国の諜報関係者も情報が欲しいと思うようになる。
こうして国の秘密は増殖し、民主主義を腐敗させていく……』
特定秘密保護法により、国の秘密を漏らした者は最高懲役10年が課されることになりました。
厳罰によって、政府の監視システムとそれが扱う秘密情報を人々の目から隠すことができるのです。
内部告発メディアのウィキリークスが昨夏公表した、NSAの大規模盗聴事件「ターゲット・トーキョー」
NSAが少なくとも第一次安倍内閣時から内閣府、経済産業省、財務省、日銀、同職員の自宅、三菱商事の天然ガス部門、三井物産の石油部門などの計35回線の電話を盗聴していたことを記す内部文書が公にされました。
対象分野は、金融、貿易、エネルギー、環境問題などで、いずれもテロとはなんの関係もありません。
アメリカが表面上は「友好関係」を強調しながら、日本のなにを監視しているのかがわかります。
NSAと緊密な協力関係にある英語圏の国々、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダにも一部共有されていました。
(これらの国々はNSA文書で「ファイブ・アイズ」と呼ばれています。)
また、NSAが国際海底ケーブルへの侵入、衛星通信の傍受、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックなどインターネット各社への要請によって、世界中のコミュニケーションの「コレクト・イット・オール」(すべて収集する)を目指していることは、スノーデン氏の公表した機密文書によって明らかになっています。
標的にされているのは、政府機関だけではありません。
「コレクト・イット・オール」はすべての人々の通信を対象にしているのです。
スノーデン氏の告発によって、アメリカでは「模範的」「愛国的」といえる市民たちが集中的な監視対象になり、調査報道ジャーナリストたちが「国家の脅威」としてリストに上がっていることが明らかになりました。
大量監視は我々の安全ではなく、グローバルな支配体制を守るために、すべての個人を潜在的容疑者として見張っているようです。
『日本の通信システムの次に、インフラも乗っ取り、密かにマルウェアを送電網や、ダム、病院などにも仕掛けているので、もし日本が同盟国でなくなった日には、日本は終わりだ。』とスノーデン氏は証言しています。
そして、『アメリカは、僕たちに日本を盗聴させたかったのですが、日本の公安調査庁がそれは違法であり、倫理的にもいかがなものかと拒否しました。
どっちみち、日本を盗聴しましたけどね。
僕らは、民間のインフラにマルウェア(有害ソフト)を仕掛けました。
鉄道も、電気供給網や通信網もすべてにです。
いつか、日本がアメリカの同盟国でなくなった日に、『灯りを落とす』ことを考えてのことです。』と語りました。
また、アメリカよりも中国寄りに動いた時にも何かが起こるといいます・・・。
過去を振り返ると見えてくるものがあるかも知れません。
皆さんは、通信手段や電気がなくなった時に生きていけますか?!