世紀の相場師として、天国も地獄も見た「ウォール街のグレートベア」こと、ジェシー・リバモア (1877~1940) は
鋭い観察眼や分析力を武器としていました。
ジェシー・リバモアは、世界大恐慌の引き金を引いた1929年10月24日の
「暗黒の木曜日」に向けて空売りを行い、
1億ドル (現在の日本の貨幣価値で約6700億円) を超える利益をあげた伝説の投機家です。
その生涯で4回の破産と再起を繰り返し、63歳で自ら命を絶ちました。
その成功と失敗から得られた投資哲学は、自己を過信することを戒めていることに特徴があります。
ジェシー・リバモアは己を律する中で市場の法則性を発見し、
投資のアルゴリズムを編み出していった生真面目な人物だといえます。
「情報はすべて危険である。情報はあらゆる姿かたちで人々を誘導する。
人間の本性として、人は希望と恐れとは無縁ではいられない。
相場に勝つ必要はない、勝つべき相手は自分自身だ。」という言葉を残しています。
彼は1920年代の株価高騰がバブルであることをすでに見抜いていたのですが、
当時は株相場が下がる可能性など誰も想像していませんでした。
「投機王」と呼ばれたジェシー・リバモアは、1929年9月26日に英国が利上げを行った際に、
「マネーは米国から英国に漏れ出し、米株式は近いうちに下がる。」と見抜いていました。
しかし、バブルに熱狂する他の投資家にはそのシンプルな法則性が見えず、
「これからも上がり続ける。」として買い続けたのです。
ジェシー・リバモアは、成功に酔いしれて買い増しを続ける世の中に逆らい、
巨額の逆張りを仕掛けました。
並大抵の勇気ではできない事です。
その時、彼は「世の中に流されやすい自分」を信じずに勝負を挑んでいました。
ジェシー・リバモアは、己の内面の弱さとしっかり向き合うことで、市場の嘘を見抜いたと言えます。
大きな失敗を重ねたからこそ見えるものがある。
それは己の弱さ。
弱点を見つめれば、
「一歩突き抜けた場所」に到達できる冷静さが身につく。
規律や規則を持たない市場参加者との違いがそこにあります。
業績や水準ではなく、値段の変化率に注目し、勢いがある銘柄を取引する
モメンタムトレードを得意としたジェシー・リバモアは、
失敗から得られる冷静さ、動じない胆力を持っていたため、
高いリスクを伴う取引で成功できました。
世の中で言われていることは本当に真実なのか。
半分は本当でも、半分は嘘かもしれない。
ジェシー・リバモアは、そうした点を見抜く力が優れていました。
「自分自身の相場観と判断は、市場のアクションで確認できるまで信頼するな。」
今では、AIが株価や出来高などに応じて、
自動的に株式売買のタイミングや数量を決めて
瞬時に注文を繰り返すアルゴリズム取引の時代です。
しかし、時代は変わっても投資で成功する秘訣は変わりません。
世の中で言われている投資の教えをただ鵜呑みにせず、
市場がどのように動いているのかを分析し、
法則性を見つけられてこそ
その教えが信頼できるものと判断できる。
ジェシー・リバモアの教えは
時代が変わっても受け継がれ続けると思います。