2020年8月はコロナウイルスの感染拡大、秋に向けての米国大統領選挙、米中関係悪化などの先行きの不透明さが増していました。
このようなときにこそ、アノマリーを振り返ることで投資運用の方向性の参考になるのではないでしょうか。
特に8月は日本株にとっては良くないことが揃うことから「魔の8月」とも呼ばれることがあります。
理論的に説明できないものの、経験的に観測することが可能なマーケットの規則性のことです。
Anomalyは「変異性」とも訳されることが多く、説明しきれないが通常とは変わっている事象とも言えます。
代表的なアノマリーとして、他に米国株は1月に上昇しやすい「1月効果」、日本株は4月に上昇しやすい「4月効果」、株は5月に売れといわれる「セル・イン・メイ」、月初の1日が休日で2日から始まる月は荒れやすい「2日新甫は荒れる」などのアノマリーがあります。
需給の側面で見た場合、8月は米国債の償還によるドル売り・円買いが発生しやすく、国内では輸出企業のドル売り予約の増加など円高の傾向があります。
また、ほとんど円高調整局面あるいはその年の円高ピークであることが多いようです。
8月は一年を通じて最も株価が下がりやすいというアノマリーがあります。
長期休暇に入りする外国人投資家やお盆休みに入る国内投資家が増え、市場参加者が極端に少なくなります。
このため、市場には流動性がなくなり、一日の出来高が少ない「薄商い」の日が続きます。
このように夏場に市場参加者が少なくなり、薄商いが続くことを「夏枯れ相場」と呼ばれています。
大型株の機関投資家による商いが薄まる一方で、個人投資家はこの時期、値動きのある中小型株を物色する傾向が強まります。
梅雨が過ぎ、夏本番となる8月には「8月株安」とも呼ばれます。
8月は2018年までは9年連続で海外投資家が現物株で売り越しています。
日本企業では4月~6月期の決算が終わり、海外投資機関が夏休み前にポジション調整することが影響していると考えられます。
8月についてのアノマリーはたくさんあり、それだけ8月にまつわる警戒心の表れとも言えます。
アノマリーは直接、ポートフォリオに影響を与えるものではありません。
しかし、理解に苦しむ市場の動きを経験したとき、アノマリーは自らを落ち着かせくれる知識となり得ます。
アノマリーを知っているのと知っていないとでは、心理把握も相当違ってきます。
科学的な相場の分析も大事ですが、ときには科学では説明の付かないアノマリーを振り返ってみてはいかがでしょうか。